私たちが毎日当たり前のように使っているスマートフォンや車などAI(人工知能)を搭載した端末は増えており、AIは年々身近なものになりつつあります。
そして、近年よく耳にするようになってきたのが「エッジAI」という言葉です。
これまでのクラウドAIとは異なる特徴を持ったエッジAIは、自動運転や産業用ロボットの制御など、さまざまな分野で今後の活躍が期待されています。
この記事ではエッジAIについて、クラウドAIとの違い、種類や活用例などについて詳しく解説していきます。
エッジAIとは、エッジデバイスに搭載されたAIのことです。
簡単に、「スマートフォンなどIoTでつながったエッジデバイスにAIを搭載し、エッジデバイス上で解析などの情報処理をおこなう技術」というとわかりやすいかもしれません。エッジとは「端」を意味し、よりユーザーに近い端末のことを指します。スマートフォンのほかにも、カメラや車などもエッジデバイスの一つです。
エッジAIでは、これまでのようにクラウド側ではなく、エッジ(端末)で推論や学習などのデータ処理をおこなうことで、リアルタイムに近いレスポンスやセキュリティ強化が実現できることが特徴です。
富士経済グループがおこなった調査によれば、2018年度のエッジAIコンピューティング市場は110億円見込みでしたが、2030年度には664億円にもなると予測されています。
中でも民生機器市場は2021年度以降、急速に拡大していくのではないかといわれており、エッジAIはこれまで以上にさまざまな場所で導入が進むこととなるでしょう。
クラウドAIとの違い
一方のクラウドAIでは、エッジデバイスはデータ収集のみをおこないます。集めたデータはネットワークを通してクラウドに送信され、クラウド上のAIによって学習や推論などデータを処理します。
オンプレミス型のAIもあるものの、現在使われている「AI」という言葉は、通常の場合であればクラウドAIを指していると考えていいでしょう。
クラウドには高性能のCPUやGPUが搭載されているため高速学習が可能であり、大量のデータの蓄積や学習モデルを作ることもできます。
これだけ聞くと「クラウドAIがあればエッジAIはいらないのでは?」と思うかもしれませんが、クラウドAIにも弱点があります。
たとえば、車の自動運転ではタイムラグが致命的な問題になります。AIが瞬時に判断を下さなければ、事故に発展してしまうかもしれません。
このほかにも産業用ロボットなどでも即時性が求められており、エッジAIの活躍が期待されています。
エッジAIは主に「スタンドアロン型(独立型)」と「併用型」の2つに分けることができます。
スタンドアロン型(独立型)
スタンドアロン型(独立型)はエッジデバイスのみで完結するタイプで、クラウドにアクセスしません。
ネットワークを介したクラウドへの通信がおこなわれないため、個々のエッジデバイスが自立学習することが特徴です。
産業用ロボット、工作機械などがスタンドアロン型の代表的な活用例で、即時性が求められるケースで用いられるエッジAIです。
併用型
併用型はその名の通り、エッジAIとクラウドAIを併用するタイプで、両者のそれぞれ活かしていることが特徴です。
リアルタイム性の求められる判断や制御はエッジデバイスでおこない、その他の大量のデータ処理が必要な部分はクラウドを使って処理します。
スマートフォンは、この併用型に当たります。
近年ではIoTの普及が進み、現場にあるエッジデバイスによってデータを集め、それをクラウドに自動送信するという仕組みも整ってきています。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によってテレワークやリモートワークが浸透したことで、今後ビジネスにおけるデータ通信の容量はさらに大きくなっていくでしょう。
そんな中でもなぜ、エッジAIが注目されているのでしょうか?
エッジAIのメリットは主に4つです。以下でそれぞれ詳しく解説していきます。
リアルタイム性
まず1つは、クラウドAIの項目でも挙げたリアルタイム性です。
エッジAIはデータ発生源の近くで処理をおこなうため、限りなくリアルタイムに近いレスポンスを得られることが大きな強み。
AI処理で重視されるリアルタイム性を実現したのが、エッジAIという技術なのです。
セキュリティ強化
クラウドAIの場合、個人情報や機密情報などを含む膨大なデータをインターネットを介して送信するため、不正アクセスや情報漏えいのリスクが生じます。
エッジAIでは、クラウドにアップロードできないような機密データもエッジデバイスにとどめておくことができ、セキュリティリスクを抑えることが可能です。
通信コスト削減
クラウドAIではすべてのデータを送信するため、データ容量が大きければ大きいほど、通信コストがかさんでしまいます。
一方、エッジAIでは必要なデータのみをクラウドへ送信します。データ容量が抑えられるため、コスト削減が可能です。
5Gとの親和性も高い
日本でも2020年3月から商用化が開始された5Gは、都市部を中心とした一部エリアのみのサービス提供から始まり、現在でも普及が進められています。
5Gの持つ上記のような特徴と、エッジAIなどのエッジコンピューティングは高い親和性があるとされており、自動車や製造のほかにも、医療や農業、教育など幅広い分野で活用されることが期待されています。
すでにスマートフォンなどにも搭載されているエッジAIは、さまざまな分野での活躍が期待されています。
ここからは、エッジAIの活用例について見ていきましょう。
自動運転
エッジAIの活用が最も期待されているのが、自動運転の技術です。
リアルタイムな情報処理がおこなえるエッジAIは自動運転技術には欠かせないものであることから、開発需要は急激に高まっています。
産業用ロボット
製造業などで用いられる産業用ロボットにエッジAIを実装することで、これまで手作業でしかできなかった検品などの作業を自動化することができます。
また、機械の制御は時に人命にも関わることも。エッジAIで遅延のない処理をおこなうことは、現場でのリスク低減にもつながります。
監視カメラ
監視カメラにエッジAIを搭載すれば、画像解析・映像解析によってリアルタイムな監視ができます。
交通量調査、万引きや迷惑行為、駅での転落事故防止のためのアラート発信など、活用シーンはさまざま。
コロナ禍においては、3密回避のための混雑検知システムという使い方もできるでしょう。
人物行動分析
これまでであれば、レジに搭載されたPOSデータなどによって情報を集めるしかなかった顧客の購買行動分析にも、エッジAIが活用されています。
エッジAIがカメラの映像から人を認識し、行動を追跡することでさまざまなデータを収集。
その後、各種システムから集めたデータと合わせて分析をおこなうことで、より高度なマーケティング施策を計画できます。
今注目されるエッジAIはクラウドAIよりもリアルタイム性が高く、遅延のない通信がおこなえるため、自動運転や第四次産業革命には欠かすことができない技術です。
現在ではまだエッジAIの事例は少ないものの、今後は5Gの技術と絡めたエッジコンピューティングが一般にも普及していくと考えられており、高い将来性が期待できます。
アメリカの市場調査会社Gartnerが2019年に発表したデータによれば、エッジAIは5年以内に実用化が期待できる唯一のAI技術だといい、2024年にはもっと私たちの生活に身近なものになっている可能性も。
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